「トレーニングの前にストレッチした方がいいのか、後がいいのか。調べると『前はダメ』とも『やるべき』とも書いてあって、結局どっちなんだ?」
情報が割れて見えるのには理由があります。先に結論をお伝えします。
「ストレッチ」と一括りにするから答えが割れるのです。 反動をつけず数十秒伸ばし続ける静的ストレッチと、動きの中で可動域を広げる動的ストレッチは、体への作用が別物。順番の正解は、種類×目的で決まります。
タイミング | やること | 避けること |
|---|---|---|
トレーニング前 | 動的ストレッチ・軽い有酸素などのウォームアップ | 長時間の静的ストレッチのみで済ませること |
トレーニング後 | 静的ストレッチ(クールダウン) | 反動をつけた強い伸ばし |
就寝前 | ゆっくりした静的ストレッチ+深い呼吸 | 強度の高い運動 |
柔軟性を上げたい(独立した時間) | 静的ストレッチを習慣として毎日 | 痛みを我慢して伸ばすこと |
以下、それぞれの理由です。
トレーニング直前に長い静的ストレッチ(1部位あたり数十秒以上じっと伸ばす)を行うと、直後の筋力やジャンプ力などの発揮パフォーマンスが一時的に低下しうることが、多くの研究で報告されています。筋肉が一時的に「緩みすぎた」状態になるイメージです。
ただし例外と注釈があります。短めの静的ストレッチ(1部位30秒未満程度)なら影響はごく小さいとする報告が多く、また極端に硬くて正しいフォームが取れない部位に限っては、短時間伸ばしてから動く方が合理的な場合もあります。
「前のストレッチはダメ」の正確な意味は、「長い静的ストレッチ"だけ"を準備運動にするのはやめよう」 です。
準備の目的は「緩める」ではなく「温めて、動ける状態にする」こと。順番はこうです。
軽く体温を上げる(その場足踏み、軽いジャンプ、早歩き数分)
動的ストレッチ:脚の振り子、股関節回し、キャット&カウ、ワールドグレイテストストレッチなど、これから使う関節を動きの中で大きく動かす
本番の種目の軽い負荷版(スクワットなら自重で数回)
合計5〜10分で十分です。体が温まり、関節が動く準備ができ、神経系も「これからこの動きをやる」と目を覚まします。
静的ストレッチが輝くのは、運動後と夜です。
トレーニング後は、高ぶった状態から通常モードへ戻すクールダウンとして。使った部位を反動をつけずゆっくり伸ばします。
就寝前は、リラックスと柔軟性づくりの時間として最適です。ゆっくり長く吐く呼吸と組み合わせると、体が休息モードに切り替わりやすくなります。柔軟性そのものを上げたい場合も、トレーニング直前ではなく、こうした独立した時間に毎日コツコツ行うのが正解です。
最後に、専門家として一つ付け加えます。「硬いからストレッチしなきゃ」と思っている方の中に、実は柔軟性は足りているのに、その可動域をコントロールできていないだけという方が一定数います。
見分けの一例:前屈で床に手がつかないのに、仰向けで脚を上げてもらうと90度近く上がる——これは筋肉の長さではなく、動作のパターン(股関節から曲げられない等)の問題です。この場合、ストレッチをいくら重ねても前屈は変わりません。必要なのは反り腰の記事で書いたような「使えていない筋肉の再教育」の方です。
「何年もストレッチしているのに柔らかくならない」なら、伸ばす努力の前に、一度評価を受ける価値があります。硬さの正体が長さの問題なのかコントロールの問題なのかは、体験セッションの4軸評価で確認できます。
前は動的、後と夜は静的:これが基本の型
前の静的ストレッチは「長時間・それだけ」がNG。短時間なら実害は小さい
「ストレッチしても柔らかくならない」は、柔軟性ではなくコントロールの問題の可能性
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狩野 宏多|Kota Karino
STRUCT Conditioning代表トレーナー
鍼灸師 / 日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー / NASM-PES
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